
春楡と泣き黒子 ~冷たい熱に灼かれて~
振り向いた晴の左目の泣き黒子が見えた途端、浩祥は半ば理性を失った。晴を啼かせたくて堪らなくなった。
冬の札幌で、ふたりは出会った。建て替え工事中の小学校の前で。「俺、ここの卒業生なんですよね」「奇遇だな。俺もだ」なんとなく惹かれ合い、そのままホテルで抱き合って――。建設会社で営業をしている浩祥と、ウェブ系制作会社で働く晴。一度だけの関係のはずが、二人は恋人同士として東京で再会する。相手の存在が、少しずつかけがえないものになっていくと同時に、傍にいるがゆえにぶつかり合い、心がスレ違ってしまう。偶然の出会いから真実の想いを確認するまで。男たちの心のうつろいを丁寧に描いた、切なくて愛おしいラブストーリー。