奇跡の歌は南を目指す
聖マイヨン祭までに…。謎の言葉を残して失踪した娘。年に一度人々が甘い贈り物を交わすその祭りの日にいったい何が…?
ジーヌ子爵家の長女ユーリは、18歳という若さながら祖父の作った私塾を継いで人材を育成し、領地の発展に尽くしていた。しかし、彼女が変声器で声を変え男装していたのは、そういった役目からではなく、美貌を売り物にする母や妹に反発を感じていたためだった。ある日、塾の卒業生が失踪したという連絡を受け、捜索に乗り出す途中で、前国王のシャルルに出会う。彼も知人の次男が駆け落ちしたらしいと聞き、探していたのだ。シャルルはユーリと行動を共にすることになり、彼女の意思の強さと秘めた恋の悲しさに心惹かれていく。やがて二つの事件は一つの結末を迎えるが…。人捜しの旅を続ける若い女性2人と青年3人の思惑が複雑に交錯するファンタジック・ロマンス。